「ピアノを続ける」ということ

皆様、こんにちは。9月に入り、少しずつ秋の気配を感じるようになってきましたね。

まずは、8月30日に開催いたしましたピアノ発表会について。無事に終演を迎えることができましたこと、心よりご報告申し上げます。 素晴らしい演奏を披露してくれた生徒の皆さん、そして日頃から温かくサポートしてくださる保護者の皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。海外にお住まいの生徒さんも観覧にお越しくださり客席も温かい一体感に包まれた、とても思い出深い発表会となりました。本当にありがとうございました。

さて、大きなステージを終えて新たな目標に向かうこの時期だからこそ、今日は「ピアノという習い事の継続の難しさ」について、私自身の経験や指導現場で感じることを交えながらお話ししたいと思います。

長くピアノを続けて学年が上がっていくと、多くの方が「幼少期はコンクールで結果が出ていたのに、だんだん通らなくなってきた」「モチベーションが保ちにくい」という壁にぶつかります。

これについて考える時、私は自分が昔習っていたクラシックバレエやスポーツの経験を思い出します。 集団でレッスンを受ける習い事は、日々周りと比べられながら切磋琢磨する環境です。残酷なようですが、バレエ未経験で今日新しく入ってきた子が、生まれながらの柔軟性や遺伝的に恵まれたバレエ体型を持っていた場合、初日のレッスンであっさりと追い抜かれてしまう……ということが普通に起こる世界でした。

通っていた教室の先生はローザンヌ国際バレエコンクールへの入賞者を輩出する先生だったこともあり、小学校低学年の頃から「この世界で生きる厳しさ」をはっきり言葉で伝えられながらのレッスンでした。日々の練習の中で悔しさと希望をダイレクトに味わい、目の前にいるライバルの背中を見て自然と鍛えられていく環境だったのです。

そうした集団の厳しさを肌で知っていたからこそ、私の場合はピアノの個人レッスンに対して過度なプレッシャーを感じずに済んだ一面がありました。

ですが、もし幼い頃から「ピアノ1本」で進んできたとしたらどうだっただろう、とも思うのです。

ピアノは基本的に個人レッスンです。他人の実力や客観的な評価を目の当たりにする機会は、年に数回のコンクールや試験くらいしかありません。日頃の練習は常に自分との孤独な闘いであり、全国のライバルたちの姿を日常の中で見ることはできません。だからこそ、もしピアノだけと向き合い続けていたら、私自身も毎回のコンクールの結果に一喜一憂し、心が大きく揺さぶられていたかもしれません。

では、なぜ幼少期は結果が出やすく、成長とともに景色が変わっていくのでしょうか。そこには明確な構造の理由があります。

幼少期の勝敗を分ける「環境とサポート」 本人の素直さや集中力がある前提の上で、幼少期のコンクールは「家庭の練習環境」の差が大きく影響します。自宅にグランドピアノがあること、そして親御さんがピアノ経験の有無を問わずレッスンの注意点を次回までに徹底して直す伴走力・協力体制がある場合、早期に高い完成度へ仕上げることができます。

成長とともに起こる「環境の平準化」と「追い上げ」 しかし、学年が上がるにつれてこの構図はガラリと変わります。

  • 自発的な探求心の芽生え 電子ピアノやアップライトで趣味感覚で弾いていた子がピアノに目覚めたり、進路として意識し始めると、親のサポートがなくても自ら練習法を研究し、コンサートに通って演奏を分析するようになります。
  • 身体的な成長と男女差 幼少期は発育の早い女の子が優位な場面も多いですが、成長とともに男の子の体格や手の大きさが追いつき、音圧や表現の幅で一気に頭角を現すことも増えます。
  • 他分野からの参入・一本化による加速 未就学期にはまだピアノに出会っていなかった子や、小学校以降に始めた子、スポーツなど他の習い事に熱中していた子が「ピアノ1本」に絞った途端、驚くようなスピードで抜き去っていくケースも珍しくありません。幼少期に差をつけていたのは、単純に「その時点での環境のアドバンテージ」があったからという側面も大きいのです。

学年が上がって結果が出にくくなるのは、本人の力が落ちたからではなく、「全体のフィールドのレベルが底上げされ、真の実力勝負のフェーズに入った」というごく自然な現象です。

音楽を表現するための繊細さはもちろん不可欠ですが、それと同時に、孤独な練習やシビアな結果と向き合い続けるタフな精神力がなければ、ピアノは決して持たない世界です。

世の中にたくさんの習い事や選択肢がある今の時代に、あえてこの厳しくも奥深いピアノの道を選び、真摯に高みを目指してくれている生徒の皆さんを、私は心から応援したいと思っています。そして、日々の孤独な練習を一番近くで見守り、信じて支え続けてくださっているご家族の皆様には、感謝の思いで尽きません。

すぐに結果が出ない時期は、大きなジャンプをするための大切な助走期間です。

一喜一憂することなく、壁にぶつかりながらも自分の音を磨こうとする生徒の皆さんの歩みに寄り添い、これからも一緒に音楽の本当の喜びを分かち合っていきたいと思っています。

今月も、元気にレッスンでお会いできるのを楽しみにしています!